売却できる?
亡くなった親名義のまま査定できる範囲と、買主へ引き渡す前に必要な相続登記。 遺産分割、必要書類、登録免許税、司法書士費用まで順番に解説します。
親が亡くなり、北見市に残された実家を売却しようと登記事項証明書を確認したところ、 所有者が亡くなった方の名義のままだった、ということがあります。 「名義変更を終えるまで不動産会社へ相談できないのか」 「買主が決まってから相続登記をすればよいのか」と迷う方も少なくありません。
相続が開始すると、不動産に関する権利は相続人へ承継されます。 しかし、登記記録が亡くなった方のままでは、誰が買主へ所有権を移すのかを登記上確認できません。 そのため、査定・片付け・売却方法の相談は相続登記前でも始められますが、 残代金決済と買主への所有権移転までには、原則として相続人への相続登記が必要です。
相続登記が終わっていなくても、不動産査定や売却準備は進められます。 ただし、亡くなった方から買主へ直接名義を移すことはできません。 相続人と遺産分割を確定し、売主となる相続人へ登記したうえで、買主への所有権移転登記を行います。
相続した家の片付け・空き家管理・税金を含む全体像、通常の売却手順、査定に必要な資料は関連ガイドもあわせてご覧ください。
01相続登記前の家でも査定・売却準備はできる
相続登記が終わっていなくても、不動産会社への相談、机上査定・訪問査定、 建物状態の確認、残置物の整理、売却方法や想定価格の検討は始められます。 相続人と対象不動産を確認できれば、相続登記と販売準備を並行して進めることも可能です。
| 段階 | 相続登記前にできること | 注意点 |
|---|---|---|
| 売却相談・査定 | 登記情報、固定資産税課税明細、現況を基に相談・査定 | 査定を依頼する人と法定相続人・遺言内容を確認します |
| 片付け・管理 | 相続人間で合意し、換気、除雪、水抜き、荷物整理を実施 | 遺品を一人の判断で処分せず、写真や一覧を残します |
| 販売準備 | 写真撮影、修繕見積り、仲介・買取の比較 | 広告開始や価格決定は相続人全員の意思を確認します |
| 売買契約 | 事情により相続人全員を売主として契約する設計も検討可能 | 相続登記完了や債権者承認等を停止条件にするなど専門家の確認が必要です |
| 決済・名義移転 | 相続登記後、相続人から買主へ所有権移転 | 相続登記が間に合わなければ決済できません |
「相続登記が終わるまで何もできない」わけではありません。 ただし、買主から残代金を受け取り、所有権を移す前には相続登記を完了させる必要があります。
02なぜ売却前に相続登記が必要なのか
不動産売買の決済では、売主から買主へ所有権を移す登記を申請します。 登記名義人が亡くなった方のままでは、その方が売買契約をして登記申請することはできません。 まず相続を原因として相続人へ所有権を移し、その相続人が買主へ売買を原因とする所有権移転登記を行います。
登記事項証明書で土地・建物・私道持分の名義を確認します。
遺言、遺産分割協議、法定相続分のいずれによるか整理します。
法務局へ相続による所有権移転登記を申請します。
残代金の受領、抵当権抹消等と同時に所有権移転登記を申請します。
03最初に「誰の名義にして、誰が売主になるか」を決める
相続人が複数いる場合、売却前に不動産を誰が相続するのかを決めます。 売却後に代金を分けたい場合でも、必ずしも相続人全員の共有名義にする必要があるとは限りません。
一人が不動産を相続して売却
遺産分割協議で一人が取得し、その人へ相続登記して売主となります。売却代金の分配を含む協議内容は、税務上の扱いも確認します。
複数人の共有名義で売却
法定相続分や協議した割合で共有登記し、共有者全員が売主となります。契約、本人確認、実印、決済への協力が全員に必要です。
一人が取得して売却する方法は意思決定をまとめやすい一方、 売却代金を他の相続人へ渡す方法や金額によって、遺産分割の履行なのか贈与なのかが問題になることがあります。 「換価分割」「代償分割」などを含め、遺産分割協議書の記載は司法書士・税理士へ確認してください。
04遺言・遺産分割協議・法定相続で手続が変わる
| 相続方法 | 主な確認事項 | 売却時の注意 |
|---|---|---|
| 公正証書遺言 | 原本・正本・謄本、遺言執行者、対象不動産の記載 | 家庭裁判所の検認は不要ですが、遺留分や遺言内容の解釈が問題になる場合があります |
| 自筆証書遺言 | 法務局保管の有無、家庭裁判所の検認が必要か、形式の有効性 | 勝手に開封せず、保管制度利用の有無を確認します |
| 遺産分割協議 | 相続人全員の合意、実印、印鑑証明書、対象不動産の特定 | 一人でも欠けると協議は成立しません |
| 法定相続 | 法律上の相続分、相続人全員、代襲相続の有無 | 共有名義となるため、全体売却には原則として共有者全員の協力が必要です |
05相続登記は2024年4月から義務化|期限を確認する
相続により不動産を取得した相続人は、 自分のために相続が開始したことと、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に、 相続登記を申請する必要があります。 正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
| ケース | 申請期限の考え方 |
|---|---|
| 2024年4月1日以後に相続 | 相続開始と不動産取得を知った日から3年以内 |
| 2024年4月1日より前の相続 | 原則として2027年3月31日まで。ただし取得を知った日が2024年4月以後なら、その日から3年以内 |
| 遺産分割が後から成立 | 遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を反映する登記も必要 |
06相続人申告登記だけでは家を売却できない
遺産分割協議がまとまらず、3年以内に通常の相続登記を申請することが難しい場合には、 相続人が単独で「相続人申告登記」を申し出る方法があります。 これにより、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。
ただし、相続人申告登記は、申出をした人が登記名義人の相続人であることを登記する制度であり、 不動産の所有権を誰がどの割合で取得したかを確定して登記するものではありません。
相続人申告登記は「義務違反を避けるための簡易な申出」であって、 買主へ所有権を移せる名義を完成させる手続ではありません。 売却するには、遺言・遺産分割・法定相続に応じた相続登記を別途行います。
07相続登記と売却準備で集めたい必要書類
必要書類は相続方法、相続人、登記住所、遺言の有無によって変わります。 次は遺産分割協議による相続登記で一般的に確認される資料です。
| 書類 | 目的・注意点 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍一式 | 出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍で相続人を確定します |
| 相続人の戸籍 | 相続開始後に発行された現在戸籍などで生存・関係を確認します |
| 被相続人の住民票除票等 | 登記記録上の住所と死亡時の住所のつながりを確認します |
| 取得する相続人の住民票 | 新たな登記名義人の住所を証明します |
| 遺産分割協議書 | 誰がどの不動産を取得するか、相続人全員の合意を記載します |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押した実印を証明します |
| 固定資産税課税明細・評価証明 | 対象不動産の確認と登録免許税計算に使用します。申請年度の評価額を確認します |
| 登記事項証明書・公図等 | 土地・建物・私道持分、地番、家屋番号、抵当権、差押えを確認します |
| 遺言書・検認関係書類 | 遺言による場合に内容・方式・検認の要否を確認します |
| 法定相続情報一覧図 | 取得しておくと、登記・金融機関など複数の相続手続で戸籍束の代わりに利用できる場合があります |
売却査定では、相続登記の書類に加えて、建築確認書類、間取り図、修繕履歴、 住宅ローン残高、境界資料なども確認します。 詳細は不動産査定に必要な書類をご覧ください。
08相続登記にかかる費用|登録免許税・書類代・司法書士報酬
相続登記の費用は、不動産の固定資産税評価額、土地・建物の数、相続人の人数、 戸籍の収集範囲、遺産分割の内容、司法書士へ依頼する業務範囲によって変わります。
登録免許税
原則として、固定資産税評価額×0.4%。計算の基礎は売却価格ではありません。
戸籍・証明書代
戸籍、除籍、改製原戸籍、住民票、印鑑証明、評価証明など。相続関係が複雑なほど通数が増えます。
司法書士報酬
全国一律ではありません。戸籍収集、相続関係説明図、協議書、登記申請、遠方対応などで変わります。
登録免許税の計算例
| 固定資産税評価額 | 計算 | 登録免許税の目安 |
|---|---|---|
| 500万円 | 5,000,000円×0.4% | 20,000円 |
| 1,000万円 | 10,000,000円×0.4% | 40,000円 |
| 1,500万円 | 15,000,000円×0.4% | 60,000円 |
09相続登記前の家を売却する8ステップ
自宅敷地、私道、車庫、物置、未登記建物など、売却対象を洗い出します。
戸籍を収集し、配偶者、子、代襲相続人など協議が必要な全員を確定します。
相続登記と並行して、仲介・買取、現況売却、片付け・修繕の必要性を確認します。
売却予定、代金の分け方、費用負担、税申告まで含めて遺産分割を検討します。
不動産を正確に特定し、相続人全員が実印を押印して印鑑証明書を用意します。
司法書士へ依頼するか、法務局の案内を確認して申請します。期限と売買決済日を共有します。
残置物、境界、設備、不具合、引渡し日、相続登記完了を条件として整理します。
相続人から買主へ名義を移し、合意した方法で代金・費用を精算します。
10相続人が多い・遠方・連絡が取れない場合の注意点
連絡が取れない相続人
戸籍の附票等で住所を調査し、連絡を試みます。所在不明の場合は不在者財産管理人など裁判所手続が必要になる場合があります。
判断能力に不安がある相続人
本人の意思確認ができない場合、成年後見制度等が必要になることがあります。家族による代筆だけで協議を成立させられません。
未成年の相続人
親と未成年者の利益が相反する遺産分割では、家庭裁判所へ特別代理人の選任を申し立てる場合があります。
海外在住の相続人
印鑑証明書の代わりとなる署名証明等、国・在外公館・公証制度に応じた書類を確認します。
関係者が多い場合は、相続人全員の連絡先、意思、必要書類の取得状況を一覧にします。 遺産分割が整う前に片付けや解体を決めると紛争になることがあるため、 保存行為を超える対応は全員の同意を確認してください。
11売却代金の分配と譲渡所得税も登記前から確認する
相続した土地・建物を売った場合の取得費と取得時期は、原則として亡くなった方から引き継ぎます。 購入時の契約書や建築費資料が見つからない場合は、取得費の計算で不利になることがあるため、 相続書類と一緒に古い売買契約書、領収書、建築請負契約書を探してください。
- 誰の名義で売却し、誰が譲渡所得を申告するか
- 亡くなった方の購入代金・建築代金・購入費用を確認できるか
- 相続登記費用を取得費へ含められる条件を確認する
- 相続税を納めた場合、取得費加算の特例が使えるか
- 被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除の要件を満たすか
- 売却代金から費用を引いた後、相続人間でどう分配するか
被相続人が一人で住んでいた一定の古い住宅などを期限内に売却する場合、 要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります。 建物の建築時期、利用状況、売却額、耐震・解体、相続人の人数など条件が細かいため、売却前に税理士・税務署へ確認してください。
12相続登記前の家の売却でよくある質問
依頼できます。登記事項証明書、固定資産税課税明細、相続人・遺言の状況を伝えてください。相続登記と査定・売却準備を並行して進められます。
相続人と権利関係が確定し、必要な関係者が同意していれば契約を設計できる場合はあります。ただし相続登記未了を停止条件にするなど慎重な条項が必要で、決済前には相続登記を完了させます。
できません。まず亡くなった方から相続人へ相続登記を行い、その相続人から買主へ売買による所有権移転登記を行います。
相続人申告登記だけでは売却できる名義になりません。相続登記の義務履行を簡易に行う制度であり、売却前には取得者・持分を反映した相続登記が必要です。
原則として、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内です。2024年4月1日より前の相続も対象で、原則2027年3月31日までの対応が必要です。
遺言等で単独取得者が確定していない共同相続財産を全体として売る場合は、原則として相続人全員の合意が必要です。一人の法定相続分だけを処分する方法は、通常の実家売却とは異なり紛争リスクが高いため慎重な判断が必要です。
原則として固定資産税評価額の0.4%です。土地の価額が100万円以下など一定の場合は、2027年3月31日まで免税措置を利用できる可能性があります。
相続登記では原則として亡くなった方の権利証を添付しません。戸籍、住民票関係、遺言・遺産分割協議書などで相続を証明します。ただし住所のつながりを証明できない場合などは追加資料が必要になることがあります。
相続人全員で処分方法を合意してから進めるのが安全です。貴重品・思い出の品・重要書類を分け、処分前の写真や一覧を残します。
自分で申請することも可能です。相続人が多い、遺言がある、住所の沿革がつながらない、売買決済が迫っている場合は、司法書士への依頼を検討してください。
13まとめ|相続登記と売却準備を並行して進める
- 相続登記前でも査定・片付け・売却方法の検討はできる
- 買主への所有権移転前には相続人への相続登記が必要
- 遺言の有無と法定相続人を最初に確認する
- 売却を前提に、誰の名義へ登記するか検討する
- 相続登記は取得を知った日から原則3年以内
- 相続人申告登記だけでは売却できる名義にならない
- 登録免許税は原則として固定資産税評価額の0.4%
- 代金分配と譲渡所得税を遺産分割の段階から確認する
相続登記を後回しにすると、相続人の増加、書類の不足、売却期限の遅れにつながります。 一方、登記が終わるまで不動産査定を待つ必要はありません。 不動産会社と司法書士へ同時に相談し、相続人の確認、名義変更、価格査定、空き家管理を並行して進めましょう。
※本記事は一般的な情報を提供するもので、個別の相続人、遺言の有効性、遺産分割、相続登記、税額、特例適用、売買契約の成立を判断・保証するものではありません。 相続・登記は司法書士または弁護士へ、税務は税理士・税務署へ、未登記建物・測量は土地家屋調査士へ、売却条件は宅地建物取引業者へご相談ください。 法令、税制、必要書類、窓口の取扱いは変更される場合があるため、各機関の最新情報をご確認ください。





